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「新産業不足不況」からの脱出 日本経済再生へ宇宙産業構造改革の貢献 |
はじめに
日本経済の現状は「新産業不足不況」といえる。現在の失業率は50年ぶりの高さにのぼり、今後更にリストラが進み増加するだろう。基本的な対策としては、過剰供給状態にある古い産業の保護を止め、新産業を創造・発展させることであろう。 宇宙活動の商業化 米航空宇宙局(NASA)や日本経団連などが宇宙商業活動の中で最も大きい規模に発展する可能性があるのは宇宙旅行サービスであると1998年に発表した。既にアメリカ人のデニス・ティトー氏が2001年4月、初の宇宙観光旅行を実現させた。このように宇宙活動の商業化を進めれば、20世紀に航空産業が歩んだ発展の道を宇宙観光産業も歩む可能性は大いにある。それにもかかわらず、G7各国の宇宙局は毎年3兆円の予算を商業化の為にではなく、公共工事のような損益を無視した活動に使っている。 2001年版「宇宙政策の長期ビジョン」 文部科学省が2001年にまとめた「宇宙政策の長期ビジョン」の中で、宇宙旅行実現は最大の目標に掲げられた。こういった政策決定の鍵を握る井口雅一宇宙開発委員会委員長が宇宙旅行の重要性を認識しているということは以前に比べ大きな進歩だといえる。ただこの中で「宇宙旅行の実現は30年後になる」と言明されていた。これは致命的な遅さである。更にこの政策には計画面・経済面において大きな欠点があり、もしもこの通りに実行されると日本の宇宙観光産業実現は遠のく。その欠点をあげる。 1)ロシアではある企業が、四十数年前に設計したソユーズロケットを使い2001年4月宇宙旅行サービスを開始した。古くから使用されてきたロケットを利用するため事業にかかる費用は安く済み、この会社は利益をあげることができた。今後、宇宙観光用軌道上滞在施設「ミニステーション」を100億円で造る計画がある。現代は「経済超競争時代」である。新産業における競争で成功するためには早期参入する必要がある。もし、日本の宇宙産業が宇宙観光産業実現を30年後まで待つとすれば成功するチャンスはもう残っていない。 2)中国は、軍事ミサイル産業の規模が大きいため、使い捨て型ロケットの経験も豊富にある。米ソが冷戦時代に用いていた手法である使い捨て型ロケット使用「有人宇宙飛行計画」を近年、実行に移している。従って使い捨て型ロケットの分野で日本が中国に勝つことは不可能である。しかし、再使用型ロケットという分野になると日本の方が有利になる。その理由は中産階級の規模にある。宇宙旅行サービスが始まるとその顧客の主要層は中産階級と呼ばれる人々になる。なぜなら旅行費用が2〜3百万円になるとみられるためだ。中産階級の規模は現在、日本のほうが中国より大きい。顧客が多いぶん、宇宙旅行に対する需要も大きく再使用型ロケットの必要数も増える。しかし、30年後には中産階級の規模が逆転してしまう。そうなると今日本の有利な点が全て中国の利点となってしまう。 3)日本の航空会社は熾烈な国際競争の中にいる。日本製などにこだわらず、米ボーイング社や欧エアバス社製の飛行機を購入し運行している。再使用型ロケットを運行する時、30年も日本製ロケットが完成するのを待たず、外国製ロケットを購入するだろう。これは経済政策上ひどく悪い。興味深いことに、日本の航空産業は宇宙産業より宇宙観光旅行に関心が強く、宇宙産業が宇宙観光旅行の実現をまだ考慮していない時期に日本航空協会が宇宙旅行研究委員会を設立した。 4)この宇宙政策の中で準軌道については全く無視されている。低軌道便を運行するには準軌道便の経験が必要だ。準軌道便に使用される再使用型ロケット機の開発に対しては、日本宇宙産業がこれまで重点をおいて開発してきたミサイル型無人使い捨てロケットの経験よりも、第二次世界大戦中に運行されていた有人ロケット飛行機の経験の方が役立つと思われる。こういった過去の経験を考慮した上で宇宙観光産業開発計画を立て、宇宙政策を作成すべきだ。 5)現在、宇宙観光産業開発のために政府予算は出ていない。従って、この政策どおりに進むと今後30年間現在行っている経済的価値の低い宇宙活動を継続することになる。宇宙活動に対する今の政府予算は年2〜3千億円なので、30年間継続すると6〜9兆円にのぼる。これは全て納税者の負担となるのである。また、このような利益の伴わない事業では、企業が宇宙の商業利用に参加する意欲を持たなくなるため、日本経済への損失は数十兆円規模となるだろう。この政府予算の配分の仕方は非常に悪く経済政策として劣悪だ。 6)宇宙政策は日本経済再生の為に活用されるべきだ。宇宙開発を担当する団体は、日本経済の危機的な現状を無視し、15年以上も前に科学技術庁(現文部科学省)の官僚が作った計画を実行しようとしている。彼らにとっては、既成の活動を継続させることが最も望ましいのだ。それより、もっと革新的に宇宙における一般者向きサービスを実現させ、経済活性化を計るほうが遥かに価値が高い。 マクロ経済の観点 世界経済の現状を見ると、中国など急速に経済成長している国から先進国へ安価な輸入品が増加しているため、先進国の製造業者は雇用を削減しなければ生き残れなくなっている。1980年代、ヨーロッパとアメリカで日本からの輸入品に対する貿易摩擦が起こった。その不満の表現として、当時、クレッソン・フランス総理大臣は「フランスの第一の敵は日本だ」と演説した。しかし今後は、日本の十倍の人口がある中国から安価な輸入品が津波となって先進国へ押し寄せてくる。大きな雇用問題を引き起こすだろう。 まとめ これまでの説明通り、宇宙活動が商業化していくことに政府や官僚など既得権益の保持者が強い抵抗となっている。今まで宇宙開発を担当した科学技術庁(現文部科学省)は、経済成長に対する責任がなかったので経済的価値の低いシステムを構築してきた。しかし、日本経済再生の為に重要なことは、これまで行ってきた公共工事のような宇宙政策に税金を投入することではなく、21世紀に大規模な新産業になる可能性のある宇宙観光産業の発展に投資することである。 編者感想 第一に、準軌道というステップを踏みつつ、低軌道を飛行する事の出来る再使用型ロケット機を造ることである。そうすれば、ある人は政治に、ある人は軍事に、またある人は科学に利用するだろうが、一般人は商業として利用する。21世紀の有望新産業である宇宙観光産業も再使用型ロケットの開発によって初めて生み出される商業活動の一つである。宇宙旅行サービスが始まれば、我々は宇宙観光旅行を楽しむだけでなく雇用創出、ひいては経済再生という面からも利益を得ることが出来る。 |
参照文献
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